前篇では多頭飼いを始める前に、少し考えてほしいことについて、話をしたね。
前篇はこちら→猫の多頭飼育について。互いのしあわせを模索する【前篇】
今回は前回に引き続き、多頭飼育のお話です!
僕たちは猫を多頭飼育している時、少しのことで割と動揺するのですよ。猫の関係性は人間と同じように千差万別。これ!という解決策がないのでなおさら心配になりますよね。
喧嘩なのか、ただのじゃれ合いなのか。追いかけっこなのか、いじめなのか。
ヒトの感覚は完全に当てはめられない。なぜなら相手が猫だから。
まずはその見極めについて考えていきましょう!
追いかけっこなの?いじめなの?猫の鬼ごっこと喧嘩。
猫の喧嘩と追いかけっこの観察ポイントはこんな感じだと思います!
[心配すべきガチ喧嘩の特徴]
・常に2匹の優劣がはっきりしているにも関わらず、優勢猫が執拗に劣勢猫の逃げ場がなくなるまで1日中追い掛け回す。
・優勢猫が劣勢猫に怪我を負わせることが何度もある。
・劣勢猫は自信を無くし、極力隠れ家から出てこない。
上記の場合は、一度距離を離し、関係性を見直した方が安全です。
劣勢猫が食欲低下・粗相・マーキング・おもちゃに興味を示さない。
このような行動が追加で起きているなら要注意かも。
自分のテリトリーは小さくてもいいから安心が得たい!怖い!という意思表示です。
劣勢猫には一度安心できる隔離部屋で過ごしてもらい、そこからもう一度「出会い」を演出しましょう。
優勢猫はフラストレーションが溜まっている可能性があります。
つまり、劣勢猫を狩りの対象として捉えストレス発散しているのかもしれない。
優勢猫には、おもいっきりおもちゃで遊ぶのが有効です。劣勢猫を虐めるより、おもちゃの方が楽しいことを思い出してもらいます。
また、同時に劣勢猫にもおもちゃで狩りをさせます。
いま、劣勢猫は自信をなくし、自分を弱く見積もっています。
狩りが出来、キャットタワーで高い場所に上がり、自信満々の態度をとれれば
優勢⇔劣勢の関係性は残っても、虐めの対象ではなくなります。
優勢と劣勢は悪いことではない。対等でなくても良いじゃないか
優勢・劣勢と聞くと、ついつい
「え……2匹は平等にしたいのに。優劣をつけちゃうの?」
と、思われてしまいそうですが、
平等や優劣の重さが「人間」と「猫」で大きく違うのです。
例えば、1才のオス猫(先住猫)と4ヶ月のメス猫(新入り猫)。この場合、人間の愛情の比重は関係なく、たいていの場合、優勢を勝ち取るのは体の大きく歳も少し大人なオス猫です。
この時、優勢猫は劣勢猫を必ず虐めるとは限りません。
ちびのメスの猫さんが兄的存在のオス猫さんに滅茶苦茶に手加減なく噛みついてじゃれれば、きちんとオス猫は相応の手加減をもって、やり返します。
どれほどの強さで噛むと痛いのか。引き際をわきまえないと、どうなるのか。
猫はちゃんと教育してくれます。
これを人間が行うのは非常に難しい!
「いたーい!!噛まれたら痛いんだから、教えなきゃ。噛んじゃうぞ!」
と人が本当に噛んだとして、相手は猫。種族が違い過ぎて、超高難易度だと思います。
適切なタイミングでなければ、嫌われるだけです。
若い子猫は通常、兄弟間でこの痛みを知り、加減を覚えていくのですが、様々な事情で幼少期にこれらを教われなかった猫は加減が分かりません。
猫を複数飼うなら若い猫同士が良いと言われるのは、この社会性を学ぶ姿勢は若い猫の方が柔軟だからです。
子どものころから、ひとりで人の元で育った猫同士では、どちらも猫の社会ルールを知らないのかもしれません。
優勢と劣勢は移ろうもの。成長と共にマウント合戦になることも。
具体的に優劣の事例を出してみます!うちの場合です。参考にしてみてください。
[優勢猫の特徴]
・常に勝気で相手に挑んでいく。耳は寝ていない。
・積極的に首などを噛みマウントをとろうとする。
・お気に入りの場所に他の猫がいる場合、降ろして場所を奪う。
・追いかけっこは、もっぱら鬼の役割をやりたがる。
[劣勢猫の特徴]
・小競り合いを挑まれたとき、勝負する前から耳が寝ている。
・マウントをとられてもあまり抵抗しない。
・自分が先に寝ている毛布などを簡単に優勢猫に譲る。
・追いかけっこは、鬼の役目をさせてくれない。逃げ役ばかり押し付けられている。
これは同レベルの相手では頻繁に入れ替わります。
わかりやすいのは、やっぱりこれかな。
最強の有利ポジ「高い所が偉い!!」
ここで私の家で良く見る優劣の入れ替わり例を紹介します。
うちでは兄猫は劣勢の立場でいることが多いのですが、
いつもは優しいのか、気が弱いのか……なんでも弟猫の言う通りにします。
おもちゃも先に遊ばせてあげるし、寝床も強請られれば明け渡します。ただ、弟猫に対し我慢できない、かつ譲れない時には豹変します。
キャットタワーの上をとっている時なんかは、強ポジが取れているので絶対譲りません。
弟「退いてー!そこ上がりたい!」ぺシッ←猫パンチの弱パン
兄「いつも調子乗りすぎなんだよオラァ!!!!」ボゴッ!←猫パンチの強パン
……いつでも譲りっぱなしでは無いようですわ。
まじで「ドゴッ」って音しますからね。爪は決して出さないのですが、音にビビります。
さっきまで意気揚々と強気でいた弟は一瞬でしょんぼり耳が垂れます。
「えッ……兄猫が怒った?」
と、しばし茫然とします。そうしてしばらく兄猫天下の日々があり、また弟が優勢を取り戻すのが日常です。
優劣は成長速度や環境で変わりますし、
必ずしも劣勢=かわいそう。優勢=いじわる。
ではないと考えています。
むしろ、優劣がはっきりしていた方が、猫達は自分のポジションの範疇がしっかり把握できて過ごしやすいのかもしれませんね。
気を付けるべきポイントさえ押さえれば、優劣は過度に心配する必要はないと私は考えています。
大切なのは、それぞれが怯えず過ごせているか。くつろげる場所はみんなが確保できているか。私はそっちを注意するようにしています。
多頭飼育の現状。みんなは何匹の猫と暮らしているの?
1頭飼育と多頭飼育。現状ではどのような割合になっているのでしょうね?
東京都福祉保健局が平成29年度のデータを公表しています。
非常に有益な内容になっていますので、気になった方はこちらにリンクを貼りますので詳細を見てください。
その中から、猫の多頭飼育に纏わる情報を簡単にまとめてみました!
Q.何匹の猫を飼っていますか?
A.1匹(56.1%)2匹(29.0%)3匹(4.2%)5匹(3.7%)それ以上(1.4%)
過半数は1頭飼育!さらに驚いたのは、2頭飼育は3割近くだったということ。
調査結果を見るまでは、6~7割は1匹の猫さんと住んでいる世帯が多いのかな?と思っていました。
しかし、結果は多頭飼育している世帯が全体の44%近いのだということ。
ほぼ、半数の世帯は多頭飼育をしている。
これは正直驚きました。
確かに、twitterなどで発信されている方は多頭飼育されている方が多い印象でしたが、まさか半数に迫る勢いだとは。全国の調査結果はどうなっているのでしょうね。資料が見つかり次第、追記したい所存です!
もっと知りたい!みんなの多頭飼い!
さて、ここからは統計上の信頼性を確実に担保出来ないのですが、
(統計学上のアンケート有効回答母数を確保できなかったということです)
twitter上で、さらに突っ込んだアンケートをとってみました!
※ご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました。
そのアンケートとは……
“多頭飼育の猫達の血縁の有無”
とても興味深い結果が出ました。
一般的に、兄弟猫・親子猫というのは幼少の頃から共に過ごすことが多いわけです。もちろん血縁関係がなくとも仲の良い猫は多数います。
インスタグラムやtwitterではどう見ても親子・兄弟でもなく仲睦まじい微笑ましい猫さんたちを見かけますよね。
今回は多頭飼育している方を対象にアンケートを取らせていただきました。
つまり、上の結果でいう44%の方々に向けたアンケートになります。
Q.何匹の猫を飼っていますか?また、その猫達に血縁関係はありますか?
A.2匹。血縁関係あり(17%)
2匹。血縁関係なし(37%)
3匹以上。血縁関係あり(17%)
3匹以上。血縁関係なし(29%)
上記のような結果になりました。
一番多い飼育形態は【2匹。血縁関係なし(37%)】となりました!
血縁関係のある【2匹飼育】と【3匹以上飼育】している世帯の割合は同じ17%だったのです。
私は当然。2匹飼育が実態調査では29%(東京都しらべ)だったのだから、
次点は【2匹。血縁関係あり】になると思い込んでいました。
ところが、次点は【3匹以上。血縁関係なし(29%)】なのです。
非常に興味深いと思います。この結果から、
66%のご家庭は血縁関係のない猫たちが同居している!
とわかります。
多数派は血縁関係のない猫さん同士の同居だということ。「猫同士の仲良くなる方法」「多頭飼い コツ」など、多数のHPなどで紹介されていますが、そこには、多くの人の願いが込められているのです。つまり…
「親兄弟同士でない猫たちを、どうすれば幸せに過ごさせてあげられるの?」
そんな、猫を家族として迎えたたくさんの人からの、切なる気持ちから生まれる需要があるのだと納得しました。
[実録]実際に経験した、合計4匹の猫と同居した話
さて、難しい話は一区切り!
ここからは僕のうちの猫2匹と、一時的に同居した知り合いの猫さん2匹の話をしたいと思います。
人物紹介からどうぞー。散々語った私がこの後どうなるのか、ニヤニヤ眺めてください……
うちの猫たち
(4才オス猫、茶トラ兄猫。4才オス猫、茶トラ弟猫)
お預かりした猫さん
(1才オス猫、長毛スコティッシュくん。2才メス猫、マンチカンちゃん)
はい、女の子きたー!!!もうね、来る前からソワッソワ。私、メス猫さんを飼ったことがないのですよ。いままで何故かオス猫とばかり縁があって……女の子だよ!女の子が来るよ!!
[経緯説明]
お仕事の都合で、知り合いは数週間海外へ。その間、ずっとペットホテルとはいかない。最近は広いペットホテルもありますが、結構ケージに入れっぱなしということも多いですし。それはストレスが心配です。
さらに、いつも猫さんたちを頼むことになっている親族の方の都合がつかない難しい状況に追い込まれてしまいました。
私のところは部屋が余っているので、場所を移動するあちらの猫さんたちには少し負担になりますが、うちの2匹とも分けて過ごせる一部屋を用意してお預かりしました。
数週間なんて……もうこれは
2匹の先住猫のいるところに、2匹の新入り猫が来た!
の構図な訳です。
さて、散々エラそうに書いた私は、見事全員を仲良くさせられたのでしょうかねぇ。
※知人より、出来ればみんなを仲良くさせてあげて、全部屋行き来させられるのが理想。
とのご希望を頂いていたので、挑戦しました。
本来、一時預かりであれば部屋は分けたまま決して会わせないのが最適かと思います。
お互いの猫に少しでも積極的な攻撃性が見られれば、その時は完全別室生活と決め、面会を行いました。
1)初日~数日
定石通りに。新入り猫さんたちは急に飼い主さんから離れた知らない場所に来たのですから、安心できるまで一部屋でゆっくりしていてね。
2)数日後
うちの猫たち。離れた隔離部屋が気になってしょうがない様子。新入り猫さんたち。すっかりくつろぎ、急遽用意したキャットタワーで日向ぼっこを愉しむ。
3)そしてファーストコンタクト(4日目)
図で描いたように、いつも人の見ている時にしか入らないダイニングルームを中間地点としました。
新入り猫さんのキャリーは小さかったため、断念。キャリーを使った方が安全度は増すと思います。
新入り猫さんは中間地帯にいてウロウロしてもらい、私は先住猫領域へ移動。
扉を3センチ以上開かない様に固定して、うちの猫たちには中を様子見してもらいました。
うちの弟猫とスコくん。ドア越しの鼻チューご挨拶。
3センチの隙間でお互い匂いを嗅ぎ、その場でゴロゴロしはじめる。
…ええ。早いね。もうごあいさつ?
しかし!
うちの兄猫「……」←ドアを見ているが明らかに警戒中。
さらに、弟猫とマンチカンちゃん。
マンチカンちゃんがドアにくるのをまって、弟猫は同じように鼻チューのポーズをとっていました。
マンチカンちゃん「…シャー(小声)」
弟猫「」←鼻チューを断わられショック。
ここまでで3分経過です。
はい、お疲れ! 今日はここまでー!
新入りちゃんたちは元の部屋に。
うちの猫たちは新入り達がいなくなった中間地帯を気が済むまでチェック&パトロール。
そこからは、この中間地帯を使ったコンタクトを繰り返しました。
4)1週間後
中間領域内を徐々に開放。もう弟猫は新入りちゃんと仲良くなったと思い込んでいるらしく、早く行こうとうるさい。
弟猫とスコくん、そしてマンチカンちゃん。
3匹は距離が縮まり、30分程度の面会は問題なく過ごせていました。
一緒にボール遊びや窓の外を並んで見ていたり、もう寛いでいましたね。
この3匹は良かったんですがね。
問題はうちの兄猫。もう完全に
兄猫「……なんか知らん奴いるけど。かかわらんとこ」
な態度をとり続けました。弟猫が中間領域にいても、ちらりとドアを一瞥するだけ。
ドアは勝手に入れないため、新入り猫たちがこちら側に来れないのを兄猫は理解できていました。
ですが、近づくつもりも毛頭ないようでした。中を見ることはあっても、決して中に入ろうとはしません。
さらに、新入り猫達が隔離部屋に帰った後は毎度パトロールを欠かしません。
これはもう……
兄猫「まだ新入りを受け入れたくない」
と言っているようなもんですよね。
これは難しいかなー……
時間は過ぎても、何日経とうが兄猫の態度は変わりませんでした。
5)そして最終日
結局、仲良くなったのはうちの弟猫とスコくんとマンチカンちゃんだけでした。
中間領域と隔離部屋をつなげた空間で毎日1時間運動会したり探検したり3匹は楽しそうに過ごせていましたね。
スコくん、マンチカンちゃんともに食欲・排泄に問題なし。
無事、最終日を迎えられたのが一番ホッとしたのを覚えています。
そして知人は帰国し、猫さんたちを連れて帰りました。
かわいそうなことをした……と思ったのは夜になってから。
弟猫が、いままでスコくん・マンチカンちゃんのいた隔離部屋に行き何度も匂いを確認してはきょろきょろしていました。きっと探していたのでしょう。
そして兄猫さんは、ふーっと言いたげな様子でふんふん辺りの匂いを確認し、安心を得たようでした。
お疲れ様。ストレス掛けたね、ごめん。
これが、一時の事ではなく終生のだったら、私は彼ら全員に安心と満足が与えられたでしょうか。
当然!と胸をはれる自信がない……
たしかに、スペースは確保できたと思います。兄猫も時間をかければ受け入れられたのかもしれません。
ただこの時、兄猫だけでなく実は私にも結構なストレスが掛かっていました。
もちろん、知人の猫さんをお預かりしているのですから万が一はあってはいけません。
常に健康面を心配していました。
ただ、そうではなく……単に、
仲良くなれない猫を見るのはしんどい!!!
ということ。別に威嚇もひどくない、近づかなければ問題ない。それでも仲良しでない猫同士を抱えるのは本当にしんどい。慣れていない人にとっては特にそうだと思いました。
私にとって、これはとてもいい教訓になっています。いい経験をさせていただきました。
※知人猫さん、うちの猫はその後健康被害もなく、元の生活に戻っております!
多頭飼育は負担が2倍。でも幸せは2乗もしくはそれ以上かもしれない。
今日は長い記事になってしまいました。
多頭飼育は各世帯、各猫同士で色々な形がある。
だから、私たちは情報交換を繰り返し、少しずつでも猫たちに快適な環境を提供できたら……
そうして、みんなでしあわせってやつに少しでも近づけたら。
その時は何にも代えがたい何かが得られるかもしれません。
ではまた!