前回は[フード選び!その前に…]をざっくりとお話をしました!
・値段だけを見てフードを選ぶのはOK?NG?
・ヒルズやロイヤルカナン。大手メーカーのメリットは?
・プレミアムフードなら何でもいいの?
・病気の予防に療法食はやめよう!
・手作りフードは知識をつけてから!
(こんな話でした。→前回の記事はこちらです:キャットフードに正解はあるの?値段で判断しない!選び方のコツを知って、猫との食生活を楽しもう!)
さて今回からグッとフードに関するディープな世界へ入っていこうと思います!
「うわぁ…生物化学みたいな用語ばっかりで読みにくい」
と思われないように努力する所存です!
まぁ僕、理系だし?ちょっと凝り性だし?(ほぼオタクだし…)その時点で説得力なくなりそうだけど、大丈夫!この辺りを覚えると、獣医さんとのコミュニケーションもグンとスムーズになります!
本日のポイントは【成分表】 キャットフードには何が入っている?
今日は主に総合栄養食の成分についてお話しします!
「絶対に総合栄養食をメインで与えて!」
となぜ言われるの? 一般食とは何が違うの? その辺りを掘り下げていこうと思います!というかね……掘り下げなくていい!と思う方は素直に総合栄養食と書かれたフードをあげるのが一番だよ!今回のお話は知っていればどんどんフードへの理解が深まるけど、知らなくても猫が不健康になる訳じゃないので…ただ、理解が深まればフード由来の体調異変に気づきやすくなるので、興味のある人は是非!
1・成分表で見るべき大項目:タンパク質・脂質・粗繊維・灰分・水分とは?
タンパク質は何となーくわかる。でも粗繊維・灰分って何だろう?
2・動物性タンパク質は多い方が良いに決まってる?
タンパク質の多い少ないで起こるメリット・デメリットを把握して、猫さんの種類、成長ステージに適したフードを選ぼう!
3・粗繊維=食物繊維?
水溶性食物繊維と不溶姓食物繊維を区別する!便の調子に直結するこの2種類を把握しておこう。
4・灰分…って何。灰分とはミネラル類の事!
何事もバランスですよね!上手にお付き合いが必要な必須栄養素について!
またしても少々長い記事になりますが、これを把握して日々のキャットフード選びにより自信をつけていただけたらなと思います!
成分:タンパク質・脂質・粗繊維・灰分・水分とは何か?
もしかしてパッケージ…すぐ捨ててないですか?もったいないです!
保存容器に移すからと捨てる人!捨てる前にスマホで裏に書かれている文字は、写真を撮っておきましょう!しばらく同じフードを与える予定の人は良いんです。次の袋の裏が見れるので。
でもローテーションしたり、ちょっとお試しで頼んでみたって方。この数値バランスは次のフード選びの貴重な情報源になるから記録しておいた方が良いです!おなかを壊した、便秘しちゃったなんてときも獣医さんに詳しく説明できるし便利!出来れば【成分】【原材料】のどっちも記録しておくのがオススメ!食物アレルギーが起きた時の原因究明の手掛かりにもなります。
さて、【成分】の5項目タンパク質・脂質・粗繊維・灰分・水分
(まあ水分は説明いらないよね…ドライフードなら10%、ウエットフードは70~80%くらいで固定なので)
特に今日焦点を当てる3項目。タンパク質・粗繊維・灰分とは何なのか?しっかり解っておきましょう。(脂質は別の機会に。でも脂肪分ってことはなんとなく分かりますよね!)
タンパク質:フードの主役。その働きは?
タンパク質は皆さんご存知、お肉やお魚に含まれる動物由来の動物に欠かせない栄養ですよね。タンパク質=マッチョ!なイメージがあると思います。ピンポーン。その通り!筋肉の維持や健康な被毛の維持にタンパク質は欠かせません。アミノ酸とか聞いたことあるでしょ? 実は、タンパク質はアミノ酸の集合体!たくさんのアミノ酸が集まってタンパク質を作り、猫さんの健康を守っています。
人間の肝臓では炭水化物から主栄養源になるグルコース→グリコーゲンに変化させますが、猫は違います!
猫の肝臓ではタンパク質が主栄養源になってグルコース→グルコーゲンに変身させ、体が求める栄養に分解しているんですね。
私たちの人間の主食とネコの主食はこんな感じ↓
人間にとっての白米やパン≒猫にとってのタンパク質
猫が1日に必要とするタンパク量は人間の7倍近いのです!(体重1キロあたり)これは一番先頭に書かれるのも納得。主役の成分です。
子猫期 | 成猫期 | シニア期 | |
タンパク質(最低) | 30%以上 | 26%以上 | 26%以上 |
タンパク質(推奨) | 35%以上 | 30~45% | 30~45% |
出典:子猫の必要タンパク量と大人猫の必要タンパク量の違い(AACFO)→AAFCO METHODS FOR SUBSTANTIATINGNUTRITIONAL ADEQUACY OF DOG AND CAT FOODS
さて、大事だと豪語しておきながら注意点もあげておきます。じゃあ、たくさんあげれば健康な体を維持できる!と安易に考えるのもどうでしょう?
例をあげていきます。
【やんちゃ盛りの8か月!今が成長期のベンガルさん】と【そろそろ落ち着きが出てくる5才。去勢済のアメショさん】
この2匹が同じ量のタンパク質を食べて良いのでしょうか?
絶対、駄目だよね?ベンガルなんてキャットタワーひとつじゃ運動が足りないくらいハイパー動く種類じゃん?くらべて、アメショとかはちょっと運動量違うよね?個体によってはおっとり目なコもいるし…
この2匹を人間に例えるなら
【朝練から夜まで部活上等!体育会系男子高校生】と【そろそろアラフォー見えてきた社会人】みたいな感じでしょ?……同じ食事じゃ身体に悪いよ。これ同じタンパク量で食べ続けたら、どっちか健康被害が出るでしょう。
僕もうスタミナ丼ばっかり食べるの無理だもん。高校生の時は毎日バクバクいってたけどね!もう一回で胃もたれする。毎日とか胃腸がおかしくなる気しかしない。
↓ニュートロを例に出して子猫、成猫(活動的な猫用・室内猫用)を紹介します。
画像クリックで成分も見れますが、全然違う!初めて買う時は最少量の袋から買うのをオススメします(いきなり4キロとか買わない!)体質に合わない、嫌がって食べない→全廃棄を何度体験したか……!
子猫:タンパク質36% 成猫ワイルドレシピ:タンパク質40%(←活発で高タンパクが合う若い成猫用)室内猫アダルト:タンパク質33%
こんなに違いがあるのが分かります。ちなみにニュートロは活発な生体維持を促すことを理念にしています。なので、タンパク質を多く配合している訳です。室内飼いで運動嫌いの成猫は28~30%程度でも十分健康的に過ごせるという獣医さんもいます。そんな猫さんのために、ヒルズはもう少しタンパク質を抑えて過剰にならないように調整されています。
↑ヒルズの室内猫用(避妊去勢済)フードがだいたい29%程度のタンパク量を採用しています。こちらもクリックで詳細は参照できます。
タンパク質は多すぎず少なすぎず。品種、年齢、活動量をしっかり考慮し“上質=消化吸収の良い”フードを選びましょう!
また、いくら良質なタンパクと言っても、色々あります。チキン、鴨、牛、羊、サーモン、タラ…
グレードが高いから、絶対猫さんは健康になるはず!
……とは限りません。合う合わないは、どんなフードにも起こります。
タンパク質を含む原材料がアレルギーの原因になり、消化不良になってしまう猫さんも稀にいます。これはフードの良し悪しではなく、単にその猫さんにとって「消化しにくい」「体質に合わない」のです。いくら高級な原材料を使っていても、体質に合わないものは猫さんの負担になってしまいます。なので下痢などを起こしてしまう、吐きもどしてしまうという猫さんは原材料にも注意してあげてください。
チキンだけじゃなく、たくさんの原材料をローテーションするとアレルギー対策ができるかもしれません。ロイヤルカナンやヒルズはチキンが主材料になっていることが多いです。
療法食などの食事療法が必要になった際にお世話になるこの2大メーカーさん。
僕は万が一、療法食になる際に備えてチキンオンリーを長期間与えることを避けています。色々なお肉やお魚をローテーションに入れ食べられるフードの選択肢を多く残す目的です。
チキンアレルギーの猫さんは大変でしょうね……
まあ諸説あるのでローテしてれば大丈夫とも言えませんが!!お守りみたいなものとして!
(因みにフードをローテーションするデメリットをお伝えしておきます。これはもう単純明快。フード由来の病気を疑われた際、原因の特定が難しくなることです。なので、あまり複雑にするのも考え物。うちでは5種類も6種類を毎日ローテーションせず、2~3種類程度、それぞれ1ヶ月スパン程度に留めています)
粗繊維=食物繊維じゃないの? フードに含まれる粗繊維は便に及ぼす影響が大きい!
はい、次は繊維のお話いきましょう!
「アミノ酸やらグリコーゲンやら肝臓?ややこしかったわ。わかりにくいじゃん!嘘つき!」
……うん。でも次は繊維なので大丈夫です!食物繊維とか!みんな大好きダイエットの話題につきものの食物繊維!
だがなんと。ここで衝撃のお知らせです。
粗繊維=食物繊維という意味ではない!食物繊維は2種類に分かれている!
これなんか日本語変えられないの?…普通さ、成分表に「粗繊維」って書かれていたら「繊維?ああ、はいはい食物繊維ね?」
って思うじゃん? 絶対思うじゃん!ややこしいのは僕らのせいじゃないよ。この表記でいこうって最初に採用した人が悪いと思う…
粗繊維ってそもそも何?
粗繊維は、もちろん食物繊維です!ただ、ここで表記されている“粗繊維”はざっくりいうと
粗繊維=猫が消化吸収できない繊維
という意味なのです!なので、食べて摂取した食物のうち、水に溶けて吸収される食物繊維(水溶性食物繊維)は表記に含まれないんですね。消化器官を通り抜けて、ぎゅぎゅーっと絞られた“本当の絞りカス”のみが粗繊維として表示される訳です。
【水溶性食物繊維と不溶姓食物繊維】
食物繊維と一口にいっても、大きく2種類に分けられます。それが“水溶性”か“不溶姓”か。簡単に言うと、溶け込んで吸収されるなら水溶性。溶けずに排出されるなら不溶姓になります。
ざっくり説明!何が違うの?水溶性と不溶姓!
【水溶性食物繊維の役割!!】
・溶けやすい=善玉菌のエサになりやすい。腸内環境を整えるよ!
・するっと通過!腸の粘膜を保護するよ!
【不溶姓食物繊維の役割!!】
・繊維としてイメージしやすいのはこっち!腸内を通過するとき、無駄なものを絡め取って便になるよ!
・蠕動運動を促進して、便を固めていくよ!
よく、便秘対策フードが販売されていますが、配慮されていればいいってもんじゃない!水溶性と不溶姓はまるで違う働きをします。ちょっと極端にいうと……
・水溶性食物繊維が多いフード→便に水分たっぷり、すぐに排出→便を柔らかくする作用。
・不溶姓食物繊維の多いフード→いわゆる繊維たっぷり、ゆっくり排出→水分は抜けて便を多く、固くする作用。
なので、「便に配慮」と書かれているフードを選ぶとき、下痢気味の猫さんは、不溶姓食物繊維の多いフードが有効なことが多いし、便秘気味の猫さんは水溶性食物繊維が必要かもしれない。これは一概には言い切れないので、あまりに軟便や下痢、もしくは便秘が続くときは獣医さんに相談した方がいいです。
特に下痢はウイルス性が原因だとフードでは解決できないですし、子猫やシニア期は体力に直結する問題です。水分も奪われやすくなるので、フードを調整しても治らない場合は迷わず獣医さんに相談しましょう!その時、現在与えているフード情報も持っていくと獣医さんの診察に役立つと思います。
食物繊維は腸内環境に必要不可欠な存在!違いを把握して、便に異常が現れた時の判断基準にしていきたいですね。
灰分って…何? 猫の健康維持に欠かせないミネラル類!
もうこれに至っては日常生活でなじみがない。なによ灰分って。イメージが湧かないどころの騒ぎじゃない。こればっかりは覚えておこうとしか言い様がない……
灰分=ミネラル類全般!!
じゃあ最初から[ミネラル]って書いてよ!ミネラルならなんとなく分かるわ。なに「灰分」って。日本語ムズカシイ。昔はミネラルを灰分って言ってたんでしょうよ……語源はね、食べ物を火で燃やし尽くして灰になっても残る鉱物類ってニュアンス。しかも灰分の読み方[カイブン]だから。ハイブンじゃないから。でももう誰も日常生活で使ってない所為でわかんないよ。もうミネラルの方が馴染みあるからさ。せめて…
灰分(ミネラル類)とかで表記を統一してくんないかなぁ?
では、気を取り直して灰分(ミネラル類)の説明をはじめます!
灰分(ミネラル)ってことは=リン・マグネシウム・カルシウムとかの必須栄養素だよ!!尿路結晶とかになっちゃった猫さんの飼い主は敏感に反応する“マグネシウム類”の話がここで入ってきます。便のつぎは尿のお話になる訳です。
猫にとって必要なミネラル分は沢山ありますが、主たる要素は以下の通り!
・カルシウム/Ca
・リン/P
・マグネシウム/Mg
・ナトリウム/Na
・カリウム/K
・塩化物/Cl
・硫黄/S このほか10種ほど。
これらの要素は一日100㎎以上の摂取が望ましいと言われています。また、単に摂ればいいという話でもなく、それぞれが分解吸収の補助作業も行うのでバランスが非常に重要。
総合栄養食のフードでは調整された状態で6~10%程度含まれています。
一度でも猫さんが尿の問題を抱えたことのある飼い主さんが心配するミネラル過多について。マグネシウム由来の尿結晶。カルシウム由来の結晶などが尿の疾患として有名ですよね。じゃあミネラルって少ない方が良いのかな? と思われるかもしれませんが、灰分はそれぞれに大事な役割があります。
マグネシウムが不足すると高血圧や神経障害を招きます。また、カルシウムの不足は骨格形成異常や筋肉異常、てんかんの原因になり得ます。どっちも大事な栄養素だったんですね。過剰はもちろん良くありませんが、欠乏も怖いのです。
尿路結晶の問題にフードあれこれは欠かせない議題。でも大切なのは水分摂取と運動だと僕は考えています。
(水分摂取量の目安記事はこちら→一日に必要な水分量は?猫が沢山お水を飲むようにできる工夫あれこれ)
さて、カルシウム・マグネシウム・リンは上記の比率ですが、よく「塩分が…」と話題に上がりやすい「ナトリウム」について!
しょっぱいと、いかにも健康に悪そうですよね。実際どうなんです?ってとこを考えていきましょう!
2016年に、フランスのナント大学が中心となって猫のフードに関する調査研究が行われました。
「塩分を摂取しすぎた猫に健康被害は起こるのか?」
という項目に関して、「明確な被害は認められなかった」という報告があります。しかし、「ないとは言い切れない」のが現状。よって、下記のようにナトリウムの摂取目安を提唱しています。塩分が心配な方は、この数値を参考値にするのが現状の最適解かと思われます。
(ナトリウムに関する出典→Sodium in feline nutrition)
猫のナトリウム摂取許容量(年齢に関わらず一律) 0.5~3.1㎎/kcal
ちなみに食塩1gに含まれるナトリウムはおよそ400㎎(0.4g)になります。はい、ピンとこないですよね!全然わからん。…ので、実際のフードで計算してみましょう!
ロイヤルカナンの療法食(一時的に食べる、病気を治すためにフード)に含まれる量を計算してみましょう。現在広く流通している中で、最もナトリウム含有量が多いのがこのフードだと思います(もっと濃いのもあるかも…僕の知る限りということで)
100kcalあたりのナトリウム量0.33g 0.33g=330mg → 3.3㎎/kcal (記載値)
3.3mg/kcalでした。推奨されている許容値の上限(0.5~3.1mg/kcal)を少し超えたあたりですね。療法食を食べている猫さんでも推奨値に近いフードを食べているということがわかります。一番しょっぱいフードでもこの程度なんですね。推奨値は意外と幅広く認められている印象です。
以上が灰分項目で見るべきポイントでした!総合栄養食を謳うフードであれば、これらの灰分バランスはクリアされていると考えて大丈夫です。
さて、ここで僕らが気をつけなくてはならないのは「おやつ」!!!
おやつは上記のバランスを簡単に崩してしまいます!
例えば「かつおぶし」「にぼし」「ササミ」など。
これらは、総合栄養食が想定した灰分バランスにプラスアルファで混入してきます。とくにカルシウム・リン・マグネシウムのバランスは崩れやすい。せっかく計算されつくしたフードをあげていても、毎日毎日“にぼし”をあげればカルシウムは毎日オーバー!ってなっちゃいます。
「おやつ」は与えすぎずほどほどに…と言われるのはこのため!
ご褒美に、コミュニケーションに、食欲のない時期に。「おやつ」はここぞという時に上手に与えていきたいですね。
最後に今回のおさらい!
今回もお疲れ様でした!毎回長いね、ほんと長い。ということで今日のポイント!それはズバリ……
成分表と原材料の見方を知るとフードの事がもっとわかるよ!良くわからない時は[総合栄養食]を与えよう!そして、おやつはあげすぎないでね!
これだけです!
こんなに長く語ったのにね!まとめるとコレに辿りつきます!
フードって複雑ですよね。そして改めて健康と密接に関わっているのだなぁと思う訳です。
ではまた!